漆の艶はとても美しく、その艶だけで人々の心は魅了されてしまいます。 漆が本来持っている美しさに頼るのではなく、むしろ、それを否定して漆の様々な可能性を追究しようと模索していた頃に、この作品は生まれました。 漆の艶をあえて用いず、錆絵という技法によって素朴で味わいのある画面に仕上げています。 錆絵とは、漆に砥粉を混ぜた錆漆に、水分を適度に加えて柔らかくし、筆につけて塗り描いたものです。 砥粉を加えることによって、漆の肉づきが厚くなり、筆の勢いや筆後が現れやすくなります。