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大阪の貝殻加工工場見学
1.はじめに
 螺鈿(らでん)細工で知られるように、漆芸の加飾には貝がよく使われます。それで、かねてから貝の加工状況が気になっていたので、2017年9月に大阪府和泉市にある貝殻加工工場の「有限会社中尾シェル」を、大学で指導している学生達と一緒に見学してきました。
 中尾シェルは、もとは大阪府高石市の貝殻加工の工場です。高石市千代田の一帯では、明治時代後期から、漆器や装飾品の材料として、摺貝(すりがい)や貝殻の加工品が盛んにつくられ、一部は海外にも輸出されていました。高石南村の村田正五郎が、農業の副業として、明治29年(1896年)に佐伯兼松という職人を招いてつくった工場がその始まりといわれています。大正時代には、高石町の農家約600戸のうち150戸ほどが貝殻加工にたずさわっていたようです。その後、輸入品やプラスチックの進出などにおされ、昭和40年(1965年)頃をピークにだんだんと工場数が減っていきました。現在、高石市内に貝殻加工の工場はありません。
 
2. 中尾シェルと薄貝加工の方法
 中尾シェルは昭和10年(1935年)創業の、高石市内で最後の1軒として残っていた貝殻加工工場でした。新しく道路をつくる都市計画用地になったため、近年、高石市から大阪府和泉市へ移転されました。いろいろな貝殻加工品を作っておられますが、漆芸の螺鈿細工に使われる薄貝(うすがい)については、「摺貝(すりがい)」という方法で作っておられます。
 摺貝とは、漆芸の薄貝螺鈿に使われる「薄貝」の一般的な制作方法です。もとの貝を砥石で約0.06〜0.08mmの極薄の厚さに「摺りおろし」てつくります。何層にも重なった真珠層を平らに摺りおろすので、木目状に真珠層があらわれます。
 そのほかの薄貝加工には、「へぎ貝」という方法があるそうです。1週間ほど貝を煮て、貝殻を柔らかくしてから、貝の真珠層を剥がしてつくります。主に大きな貝殻の夜光貝で用いられたようですが、時間と手間がかかるため、今ではほとんど行われていません。現在、沖縄で少し対応されているようです。
高石市時代の看板 倉庫の袋の中身は全部貝殻
 
3.摺貝の作業の見学
 見学時には、中尾シェル代表の中尾豊さんと娘さんと従業員さんの3人に、アワビの摺貝の作業工程を見せていただきました。アワビは雄と雌があり、貝の深さがあるほうが雄だそうです。まず、カバーのついた丸ノコでアワビの原貝を3cmくらいの幅にスライスしていきます。スライスできたら、娘さんが貝の内側を回転式の荒砥石で平面を出していきます。貝を棒で押さえつつ、慎重に平らな面を作っていきます。その後、従業員さんがその平らな面を基準に、一定の厚みに摺りおろしていました。
アワビの左が雌、右が雄
貝を丸ノコで3cm幅にスライス
娘さんによる回転砥石に薄貝を棒で押し付けて平らな面をつくる作業
一定の厚みまで機械に通して摺りおろす
 なお約0.06〜0.08mmの厚さに貝を摺りおろすのは大変難しく、代表の中尾豊さんしかできないそうです。大変薄く摺りおろすために、熱で破れないように、水をかけながらの作業でした。普段、漆作品の制作でお世話になっている薄貝が、つぎつぎできあがるのを目の当たりにでき、学生達も熱心に見学していました。
 また、夜光貝は大きいので、比較的大きい薄貝がとれます。夜光貝の原貝のどの部分から薄貝をとっているか教えていただきました。夜光貝のお料理は沖縄で食べられるらしいので、いつか「へぎ貝」見学にあたっての沖縄訪問の機会にでも、食べてみたいと思いました。
中尾代表の極薄の摺りおろし 
薄貝の完成 大きな夜光貝とその薄貝
4.貝の粉と貝の型抜き
 中尾シェルでは「貝の板(薄貝や厚貝)」だけでなく、様々な貝加工品も作っておられます。
 漆芸では「貝の粉」も装飾表現でよく使います。その貝の粉も作っておられました。貝の粉は大きさによって、みじん、小三、中三、大三などがあり、貝の粉の大きさが書かれた粉ふるいがありました。また、金属型の打ち抜きにより、薄貝をさまざまな形に抜いて加工もします。見学時は、機械で大量にひょうたん型に抜いておられました。お箸に貼って装飾するのに使うそうです。
貝の粉をつくるふるい 薄貝の花びら型の打ち抜き
打ち抜き用の機械 大量に打ち抜かれた薄貝
 
5. おわりに

 その後は、お楽しみのお買い物タイムです。基本的にグラム単位での販売で、いつも購入するお値段よりも安かったです。普段の制作であまり貝を使わない学生達も、お得だなと言いながら、厚貝や薄貝を買い込んでいました。私も、何に使うか何も考えないまま、目にとまったメキシコアワビの薄貝を購入しました。
 学生達と戦利品の貝を手に、ほくほくと帰途についた1日でした。

お買い物タイム 目にとまった箱一杯のメキシコアワビの薄貝